私が小さかった頃、日中はいつも祖母が面倒をみてくれていました。
あるとき、テレビでドラえもんがどら焼きを嬉しそうに食べているのを見て、どうしても食べてみたくなりました。どうしても試したくて、祖母におねだりましたが、近所の行きつけの菓子店にはなく、きっとがっかりした気持ちが顔に出ていたのでしょう。しばらく日が経って、祖母はどこかからかわざわざ探してきてくれたのでしょう、どら焼きを買ってきてくれました。期待に胸をふくらませながらビニールの包装を解き、ようやく手にしたそれにかじりつきました。
(・・・甘い・・・。)
なんだかもっさりしていてくどくて、子供ながらに失望したのを覚えています。

それ以来、どら焼きにはあまりいいイメージがなく、目にすることはあっても関心を払わないまま、月日は過ぎ、大人になりました。

普段は地方住まいの私ですが、以前、東京を訪れたとき、歴史小説好きが高じて、東京在住の友人とともに、小説に出てくる舞台をめぐっておりました。確か、天気のよい初秋の日でした。半日あちこち歩きまわって、せっかくだったら「ランチ」なんて横文字じゃなく、和風の甘いものでも、という話になりました。そこで友人が連れていってくれたのが「梅花亭」でした。

「え?これがどら焼き?」
梅花亭のどら焼きは、薄くて平べったくて、直径10cmくらいでしょうか。あんまりどら焼きっぽくない雰囲気です。銅鑼(どら)の形に見立てたもので、梅花亭の3代目が創作したものなのだとか。


どらやき 216円

どらやき 216円

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「いいから食べてみなって」
正直どら焼きにはあの子供のときの経験以来、微妙な印象しかなかったのですが、友人がわざわざ買ってくれて、勧めてくれるものを、強硬に断るわけにもいきません。意を決して、ぱくり、と食いつきました。
「うそだ!」
私が知ってたどら焼きと違う!子供の頃食べたあれは一体何だったんだ!そう言いたくなるどら焼きでした。香ばしくて、小倉あんの食感がここちよくて、あんこと生地のバランスがいい!一般的などら焼きはあんこを生地で挟んでありますが、これは餡と生地が一体になっていて、しかもこの薄さがたまらなくいい。
「・・・私、今までどら焼きのこと誤解してたよ」
「ここのは特別だけどね」

今にして思えば、私の故郷は(少なくとも私がこどもの頃は)どら焼きがあまり浸透しておらず、あったとしても、いいかげんなものだったのでしょう。それにしても、梅花亭のどら焼き、また食べたいなあ。